春爛漫、お部屋の模様替え。

ご依頼内容:洗面脱衣所 壁クロスに亀裂発生!       町田市

施工内容:壁クロス貼り替え。

『春爛漫』。本来は、4月(卯月)の御挨拶などに使うのが 一般的だそうですが、花が咲き乱れ、生命の息吹が溢れんばかりに光 輝く、といった意味の 実に美しい日本語の 一つであり、“Haru Ran man” と、正に 弾むような韻を踏む辺りは息を吞む程に絶妙で、実に心憎い 響きでございます。間もなく 年間を通して、日本が 最も華やぐ時期を迎えんとする 今この時、この様な芳しい言葉を、弥生 末でありながらも ついつい、一足先に使ってみたくなる、素晴らしき 今日この頃、皆様におかれましては いかが御過ごしでございましょうか?

 さて、今回は 水のトラブルではなく、室内壁のクロスのトラブルの御相談を頂きましたので、早速お伺いして状況を拝見致しました。舞台となるのは、広めに造作された洗面脱衣所でありまして、此方の壁のクロスが入隅 (いりすみ・いりずみ:壁の二つの面が出会った内側の凹んだ角部分。逆に凸に出っ張った角を、出隅。) の部分が、上から下に 一直線に切られて貼られており、その切れ目の上からコークボンドという凝膠体の充填剤で押さえられていました。そして、この部分に割れが生じ、亀裂が入っていたのであります。敢えて申し上げるまでもございませんが、日本の風土は季節によって或いは時間帯に依っても、温度湿度に大きく差が発生します。此れによって家屋を構築する壁材・壁下地材は温度湿度の変化の度に、例え微小であっても確実に膨張と収縮を繰り返していて、いわゆる “暴れ”ている訳であります。従いまして 表面のクロス及び充填剤は 比較的柔軟性が低いが故に、暴れる動きに追従できず、経年の末、いつしか裂けて亀裂を生じさせる結果に繋がる訳であります。こちらのお宅の現象は正に此れでした。

    

少し判り難いですが、入隅に亀裂が生じて 二面が乖離しております。此のビニールクロスのデザインの特徴は、植物の枝葉をあしらった模様を、石膏に彫って誂えた彫刻品の様な雰囲気を醸し出し、モダンでエキゾチックな印象を 静かに主張している点です。私も このデザインの柄が 美しくて、とても優れていると感じた者だけに、入隅の頂点で真っ二つに切られて縁を断たれ、二面セパレートに貼られてしまって、折角の模様が チグハグになってしまっている有り様を目の当たりにさせられると、尚更 残念で堪りません。つまり、一定の規則性に基づいて配置されている彫刻然とした美しい模様であるにも関わらず、系譜の不文律を無視し、其処でプッツリと断たれてしまわれては “ 規則正しい 一定の連続性を根拠とした美の黄金比 ” が、台無しにされたも同然であるからです。即ち、それなりのブランドの服飾雑貨などにも見られる様に 模様を売りにする以上は接合上の切れ目を、ユーザーに意識させては ならない、という事なのであります。 接合部は、多少の生地の浪費などは充分承知の上で 模様をキッチリ合わせて仕上げる事を優先し、模様の乖離を感じさせずに 飽くまでも “美” を追求すべきなのです。

 さて、お客様とは念入りに御協議を重ね、この洗面脱衣所の壁のクロスを全て貼り替える事と致しました、入隅・出隅は頂点を包み込む様に貼って 剝がれ難さと裂け難さを狙い、後顧の憂い無きよう計らいました。素材は既存と同じくビニール製でありますが、お客様の御要望を尊重しながらも、より厚手で柔軟性に富むものにし、少しでも“暴れ” に抗える様、企図し、柄は今までとは対照的に 模様柄なしの無地の布織物調にして、もう少し温かみのある雰囲気が感じられる様、目指しました。着工にあたっては先ず、壁に取り付けられている手摺り・幕板や洗面台ミラー、洗濯機、エアコン本体、収納箪笥、壁照明器具、コンセントパネル・スイッチパネル等、貼り替え作業の邪魔になりそうな物を、全て壁から一旦取り外し、その後 既存クロスを全て引き剝がしました。

完成後の入隅の様子。包み貼りにしました、もう割れたり裂けたりしません。
夏は兎も角として、脱衣所なので 温かみある落ち着き感は大事ですよね。
当然ですが、出隅も包み貼りです。尚、無地柄の強みで、貼り合わせ部の柄合わせは不要です。

 新規クロスを貼り終えた後、手摺り・鏡・パネル類 等々の一旦取り外した品々を、元通りに取り付け直します。更に、置いてあった細かい備品類は 着工前に予め、写真に其の状態をキッチリ収めておき、ヘアピン1本に至るまで 元有った通りに寸分違わぬ様に戻します。

 滞りなく作業が完了しました。前回柄もシックで結構だったのですが、今回は模様柄が無い分、錯覚効果により このお部屋の空間を より広く感じさせます。また、布織物調は温かく落ち着きのある風格を漂わせ、以前にも勝るとも劣らない 大変結構な印象を与えてくる感が あるのかと存じます。

因みに、通常クロス幅は 900㎜で規格統一されており、貼り替えの為の数量拾い出しには ㎡ではなく『m(メーター)』換算で普通、職人- 業者間で遣り取りします。つまり 現場の床~天井までの高さを測り、重なり合う捨て寸も勘案して 幅900が何本必要になるのかを弾き出し、其の本数×高さで、必要メーターを求めます。此方のお宅の場合は、高さ2.38mで15本を要すと算出しましたので、15本×2.38m=35.7 なので、36mのクロスを用意しました。今回は特に『隅(角)の包み貼り』を、最優先に考慮して必要本数を導き出しました。尚、クロスは ほぼ何回でも お貼り替え可能でございますから、将来もし『此の柄、ちょっと飽きてきてしまったな…。』等と お感じになられたら、あたかも お召し物をお着替えになるが如く、迷わず お気軽にクロス貼り替えに臨まれても宜しいのかと存じます。

 弊社は 水のトラブル以外にも、今回の様な 内装工事を筆頭に 木工事・左官工事・塗装工事 等々、住宅に関する分野で幅広く サービスの御提供を申し上げ、様々な御相談を承っております。いつでも、お気軽にお問い合わせ下さいませ。

 如何でしたでしょうか? 今回は此れにて終了致します。最後まで御覧頂き誠に有難うございました。次回も又、宜しくお願い申し上げます。